esyo|鹿児島県鹿児島市
esyo|鹿児島県鹿児島市
はじまり
7月7日の七夕、1通のメールが送られてきたことから、esyoのオーナー古川さんご夫婦とのレストランづくりが始まりました。最初のヒアリングで古川さんより渡されたコンセプトシートには、料理への想いだけでなく、店名の由来、席数、テーブルと椅子の構成、そして「おもてなし」への想いまでが、とても丁寧に綴られていました。その言葉の密度から、このレストランはすでに「構想」ではなく、「物語」のように感じました。
「相性(えしょ)」という言葉を、空間の編集軸として
古川さんのコンセプトシートには、「屋号である esyo(えしょ)は、鹿児島の方言で『相性』を意味します。鹿児島の食材や文化の掛け合わせ。食材同士の相性、一皿とドリンクの相性、そして訪れた一人一人がテーブルの上で見つけ出す、それぞれの相性。」
と書かれていました。この言葉を、料理だけでなく、プランニング、ディテール、素材、色彩、動線といった、空間を構成するすべての要素をつなぐ編集軸として扱えないか。そう考えながら、設計は進めていきました。
プランニングとディテールにおける相性
esyoの空間は、一筆書きのような曲線の壁が奥へ奥へと連なり、個室とアートの背景を生み出しながら視線と体験を緩やかに変化させ、その流れの中で南九州の風土を纏った壁と家具が、お客様をテーブルへと導いていきます。
また、よく歩く動線にはカーペットを敷き、足音を和らげることで、滞在のリズムと料理に向き合う静けさに配慮しました。これもまた、空間における「相性」のひとつです。
素材は「四季」と「歳月」を考えながら
エントランスには薪を配し、その背景の茶色の壁は、稲刈りや草払いを終えた秋の風景を思わせます。乾いた地面のような質感をもつシラス塗り壁は冬を、前室は春の新緑を、そして奥へ進むにつれて厨房のグリルの炎へとつながる夏を表現しています。空間は、季節をなぞるように奥へと進んでいきます。
ドアハンドルに巻かれたペーパーコードとエントランスで薪を受けるココヤシの壁材は火種の原料となる素材です。火が起こり、薪が燃え、鹿児島の活火山が生んだシラス大地の塗り壁へ。それが固まり、凝灰岩となった加治木石へと姿を変え、そして再び、グリルの炎へと還っていく。素材が変わる順序も物語を描いています。
森と海を想起させるオブジェクト
エントランスに積まれた角材の台は、ベンチであり、コートを脱ぐ際の荷物置きにもなります。使用した木材は、伊勢神宮の式年遷宮に出す裏木曽の山から採れた檜材です。長い時間を経て受け継がれてきた素材に、esyoが久しく続いてほしいという願いを重ねました。
湾を抱える鹿児島は、海との距離がとても近い土地です。潮風に晒され、錆を纏った鉄は、時間と環境によって表情を深めていきます。その奥行きのある変化もまた、この土地ならではの「相性」として、空間に取り込みました。
最後に
esyoは、料理・空間・人・土地が出会い、それぞれの相性を見つけていくためのレストランです。点在する要素を、数珠繋ぎのような物語として編集すること。
その中心にある空間全体のコンセプト、それが「相性(えしょ)」でした。
Construction Director : 田島 信吾 / タジケン
Brand Identity Design : 二野 慶子 / PRISMIC DESIGN.
Photography: 磯畑 弘樹
Interior Design: 中村圭吾/sail